海外建築作品の設計論における現代日本の建築家の設計根拠:グローバル社会における建築家の設計姿勢に関する研究（1）

摘要

経済や情報のグローバル化が進む現代社会において、日本の建築家が海外で設計を行う事例が近年増えている。その際、建築家は自国と異なる環境において、現地の伝統や風土などの様々な社会的コンテクストについて日本との対照の中で自身の設計コンセプトを構築していると考えられる。このような場所のコンテクストと連関した建築家の思考には、国内において地域性をテーマとして建築を構想する際の状況が敷衍化されながらも、そこに日本のナショナリティへの意識が介在することで、グローバルとローカルの双方の射程を併せ持つ設計姿勢が読み取れる。そこで本研究では、現代日本の建築家による海外建築作品の設計論について検討することで、グローバル社会における建築家の設計姿勢の一端を明らかにすることを目的とする。まず本編では、資料となる設計論から『現地国に関する設計根拠』『現地国に対する評価』『日本参照の立場』を抽出・検討する。次編では、それらの関係を分析し、さらに通時的傾向について考察する。