居住の実態と求められる共用空間について地方中核都市（宇都宮市・静岡市・新潟市）における民間分譲集合住宅に関する研究（その２）

摘要

以上から、各地方都市が持つ「地域特性」は、〈購入時の立地選択〉や〈建築空間や運営方法〉〈居住者・地域間のコミュニケーション〉に大きく影響し、各都市における特別な「ニーズ」を形成していることがわかった。地域に適応し、新たな価値を創造する仕組みを持った集合住宅を計画するためには、①地理や都市計画、市場動向を理解し、都市の「地域特性」を理解すること②居住者の住み替えや日常生活の背景から、住宅に対する居住者の潜在的な「ニーズ」を汲み取ること、③それらがどのように関連し合うのか分析することが必要である。集合住宅共用部に対する関心や、都市との連携は現状としてどの地域でも低いが、衰退傾向にある地方都市において、集合住宅の空間機能が地域に貢献する可能性を持っていることは推測できる。それは新たる変化に対して柔軟で挑戦的な活動が期待できる領域と言える。今後もこの観点から地方の集合住宅に注視するべきである。