施工図の実態に関する研究施工図の作成者と役割の変遷に着目して

摘要

1960 年代に総合建設会社が作成していた躯体図は、現在では施工図会社が作成している。各種施工図は専門工事会社が作成しており、施工図業務の拡大に伴い責任範囲も拡大している。一方、施工管理技術者の業務は施工図作成から施工図の承認へと変化したが、外注した図面の確認・承認に掛かる業務の負担は大きく、生産工程に与える影響も大きい。専門工事会社が設計・施工計画への提案を行う事例も見られ、鉄筋、型枠、鉄骨工事においては計画図を作成することで差別化を図る専門工事会社が存在したが、適正な評価はなされていない。また、建築士、総合建設会社、専門工事会社の役割は変化しているが、約70 年前の建設産業を前提とし構築された建築基準法や建築士法では、各主体の役割は変化しておらず、法制度上の役割と実態が乖離している一面が見られた。以上で示した通り、今後は「BIM 活用」や「下請会社の定量的な評価」等を考慮した法制度の見直しを行い、建設産業の実態に即し発注者、建築士、施工者の役割を整理していく必要がある。