東日本大震災による震災遺構の保存実態: 東北3 県沿岸部を対象に

摘要

本稿で確認された震災遺構は「建築物」が過半数を占めた。建築物はほぼ全てが「全体」を「現地」で保存していた。また、震災遺構は「公園」への立地が多く、県や国整備の公園内への集中的な保存事例があった。独自に震災遺構を位置付けている自治体もあった。さらに、被災前の管理状況が「公共」で人的被害「なし」,「不明」のものが多かった。本稿は保存された震災遺構の特性として、震災遺構の状態や管理者、人的被害等に着目した。今後はその他の要素の追加を検討すると共に、撤去された震災遺構やそのプロセスにも着目し、知見を蓄積したい。また現在、震災遺構を含め、震災伝承施設の整備とネットワーク化が検討されつつある。今後の県をまたいだ連携に向け、今後の保存・活用動向を補足しながら広域的に震災遺構の研究を深めたい。