作庭法からみたルイス・バラガンの空間構成手法に関する研究庭の領域分割と境界の性格に着目して

摘要

本研究では建築家ルイス・バラガンの作品の「庭」に注目し、庭に関心を持ったきっかけや空間構成について分析し、そしてその成果をもとに庭と建築を包括した空間構成手法を明らかにした。バラガンの作品とバックのスケッチには、構図、構成要素、層構成という多くの共通点がみられることが確認できた。バラガンは初期において、バックのスケッチに描かれた要素を模倣し、ある特定の視点から、スケッチの奥行き感を再現することで満足していたといえよう。しかしメキシコシティに活躍の場を移した中期以降では、地中海風の装飾は抽象化され、バックの模倣から、あらゆる視点から空間の奥行き（重層性）を感じられる空間作りへと独自の発展を遂げた。また、庭と建築の全体を、樹木や床仕上げによって性格付けた複数の領域に分割するという平面構成や、様々な性格を持った建築の壁を、庭においては樹木や段差などの言語に置き換えて用いることによって、建築と庭を等価に扱っている。