エンリク・ミリャージェスの建築思想におけるローマ建築の影響に関する研究: エンリク・ミリャージェスの建築論的思想に関する研究

摘要

本研究は、スペイン、・カタルーニャにおいて20世紀後半に活躍した建築家エンリク・ミリャージェス(1955-2000) に関する研究の一端を成すものである。　ミリャージェスに関する既往研究に関しては、若干の日本語文献と、日本語に翻訳されている海外の論考が挙げられる。例えば、ウィリアム・J・R・カーティスの『精神的地図と社会背景(1991)』や、ファン・ホセ・ラウエルタの『その瞬間に…』(1995) が挙げられる。これらの文献では、スペイン土着の建築や近代建築からの影響が論じられてきているが、ローマ建築との関係は、これまで断片的に言及されてきたのみである。アナチュ・ザバルベアスコアの論考『イグアラダの墓地』によると、ミリャージェスは1976 年にヴィツェンツァを訪れている。また、ミリャージェス自身が提出した博士論文『Cosas Vistas a izquerda y derechas(singafas)』(1987) 第2 巻では、その大部分が、新古典主義以前にローマで活躍した建築家を多数取り上げることで論じられている。このことから、彼の建築観を形成した根幹には、ローマ建築の存在が重要であると考える。そこで、本研究では、ミリャージェスの建築思想においてローマ建築の影響がいかに現れているかを明らかにすることを目的とする。