震災で失われた街並みのVR 復元に関する研究その２ SD 法を用いた元住民による２つのVR コンテンツの評価の比較

摘要

本研究より以下の知見を得た。1）柏崎市東本町二丁目「えhま通り商店街」に注目して、新潟県中越沖地震の被災前の風景を、Blender による出力とUnity による出力の2 つの3DVR コンテンツとして制作した。制作にあたっては特に形状と素材感をよりリアルにするために、当時に撮影された写真から写真測量の方法でボリュームを求め、また、写真中の壁面等のパターンをCG 上で貼り付ける方法をとった。カメラワークではコンテンツA の場合定点視点で360°見渡せる映像として出力しているが、コンテンツB では、ゲームエンジンを使用しバーチャル空間内を自由に歩けるようにした。その他にもコンテンツB には街のシンボルとなる閻魔堂を作成した。2）当時の住民による印象評価では、写真から得られた形状や素材感に関する情報はおおむね期待に添った3DVRのクオリティにつながった。コンテンツB では、ステレオスコピックなVR としたため、コンテンツA に比べ、より強い没入感が確認された。3）写真の十分に残らない路面等の情報は、類推による方法だけでは高い評価は得られない部分もあったが、今回の試みにより、当時の活気を取り戻したいという前向きな気持ちの形成につながったという意見が多く、当初の目的は達成した。操作が困難である点、VR 酔いが起きてしまうなどVR空間内を歩けることによってできた問題点もでた。人物などの配置の在り方の検討、写真が十分に得られない場合にも十分な評価を得るための形状と素材感の設定プロセスの構築、が今後の課題となる。