ウェルネス・エンタテインメントを実現するツールキット:スケッチングとメディアアート

摘要

コンピュータ・エレクトロニクス技術の発展により、メディアアートとその基盤をなすスケッチング（物理的コンピューティング）の領域は大きな進歩を遂げてきた。メディアアート領域での活動から多種のHCIシステムを開発してきた筆者は、特に筋電センサを中心とした生体情報センシングに注目して、バイオフィードバック(BF)専門家と共に認知症予防やリハビリテーションの分野で有用な新しいシステムの実現を目指している。クライアントの要請に対応したBFリハビリテーションやウェルネス・エンタテインメント(シリアスゲーム)を一品料理として個別にカスタム開発するだけでなく、オープンソース文化に基づくスケッチング(Open-source Hardware)によって誰でも容易に役立つシステムをデザインできる時代になった、その全体を支えるツールキットの提供自体をメディアアートの一形態とする基本的構想が筆者の提案である[3]。ここでは進化生物学や複雑系科学の考察から、新たなアイデアとして内受容感覚に基づく情動/感情によって引き起こされるメンタルヘルスに焦点を当てて探求している。本稿では、生体情報センシングと触覚インタフェースを応用した一種のインタラクティブメディアアート（シリアスゲーム）として、認知症予防・リハビリのための効果的なシステムの実現に向けた研究開発の状況を報告し、さらに2018年9月にヨーロッパで開催された2つの国際会議（VS-Games2018とICEC2018）の関連トピックについて報告する。