小型月着陸実証機SLIMプロジェクト:その狙いと開発状況

摘要

SLIM とは，月面着陸による有重力天体への高精度着陸技術実証を、小型の探査機を用いて行うミッションとして、JAXA 宇宙科学研究所を中心に推進されているプロジェクトである。これまでの重力天体への着陸においては、地上からの軌道決定と慣性航法を組み合わせた航法誘導が行われており、結果として、達成される着陸精度は数km オーダに留まっていた。一方で、例えば月面を例に挙げると、JAXA の「かぐや」探査機やNASAのLRO(Lunar Reconnaissance Orbiter) 探査機により、飛躍的に詳細な月面の情報が得られてからは、月面上の特定の地点にフォーカスして科学観測や探査が計画されるようになってきている。その際の典型的な位置精度は100m オーダーであると考えており、この精度を実現するためには、従来とは異なる航法誘導制御技術が必要となってくる。具体的には、探査機自身が対象天体相対の自己位置を推定し、これに基づき自律的な誘導制御を行う必要がある。SLIM計画は、このような技術(ピンポイント着陸技術")を開発・実証することを目的として、立案された計画である。