航空機ギヤボックスの最先端技術展望

摘要

航空機には様々なギヤボックスが使われている。代表例としてヘリコプタ・トランスミッション、エンジン・アクセサリ・ギヤボックス、GTF（Geared Turbo Fan）用ファンドライブ・ギヤボックスなどがあげられる。この航空機用ギヤボックス市場であるが、近年の民間航空機市場の高い伸び以上の伸びが期待される。その最大の要因はGTF に代表されるジェットエンジンの“Geared 化”である。この方式は、ジェットエンジンの出力タービンと推進ファンの間にギヤボックスを挟むことによりタービンとファンの回転数を最適化するもので、エンジンのバイパス比向上（＝燃費、エミッション低減）に非常に有利な方法であり、今後の航空機エンジンの主流になりつつある。その究極の形が「オープン・ローター」エンジンである。ただし、このギヤボックスには軽量・コンパクト、高信頼性、高効率など厳しい要求が課される。なぜなら、これら要求を満足できなければ却って燃費・エミッションの増加、信頼性の低下を招いてしまいギヤボックス搭載が逆効果になってしまうからである。このようなギヤボックスには高い設計技術が必要であるのはいうまでもない。最先端のＣＡＥ・シミュレーションに加え、長年の開発・運用経験のフィードバック、広範な試験技術に加え高度な製造技術が一体となって初めて世界的な競争力を得ることができる。本講演では、川崎重工業㈱にて長年培ってきた航空機用ギヤボックス技術・開発事例を中心に、その特徴と先端技術ならびに今後の動向を考察する。航空機用ギヤボックスは知られざる「コア技術」であり、日本が強みを発揮できる分野であることをご理解いただければと期待する。