自動排泄処理装置使用者の便性状解析のための画像取得装置とクラス分類手法の開発

摘要

近年，人々の健康に対する意識は高まっている.健康で長生きするためには，健康状態に関連した体重•血圧•血糖などのバロメータを記録し，健康状態の変化を自身で把握することが望まれる.健康状態を診断する検査手法としては，様々なものが存在するが，私たちは便に着目した.便は，ストレス，健康や食生活と関係が深く，日々の健康状態を把握する上で手軽なバロメーターである.血液検査などと違い排泄は生理現象であるために身体への負担がないことが便検査の持つ利点である.便の形状，色，臭いからはさまざまな病気の診断が可能であり，介護施設やICUでは利用者の排泄物の目視が義務付けられている.しかし，排泄された便に対する患者の自己評価は，実際に便を調べたところによる健康状態の評価とは往々にして一致せず，健康状態を正確に評価できていないことが多い.Halmonsらは，過敏性腸症候群(IBS)患者を対象に実験を行い，便の状態に対する自己評価とKing's Stool Chartや便の含水量による客観的な評価との間に相関が得られなかったことを示した.臨床診療では患者の自己報告を重視していることからも，客観的な便検査により患者の症状を診断することが適切な治療を導く上で重要だと考えられる.また，排泄物から手軽に便の健康状態を自動かつ正確に推定することは排便習慣の正しい知識を得る上で多くの人にとって恩恵があると考える.