聴取者の視点からみる演奏表現の芸術性: 時間的次元に焦点を当てて

摘要

本研究は、演奏における時間的次元の逸脱に着目し、単純なパターンを用いた演奏における表現の芸術性の度合いを、実験的に操作を通して、聴取者の視点からその芸術性の時間的な要因を検討することであった.北海道大学の日本人学生34名にパソコンでテンポと逸脱の度合いが操作されたアルぺジョと音階を聴いてもらい、各演奏に対する印象評定を行った.結果、アルぺジョを用いた実験では、中速テンポが低速テンポや高速テンポより芸術的であったと評価された.音階を用いた実験では、操作位置の中で、「曲の始め」や「フレーズの終わり」より、「曲の終わり」がより芸術的であったと評価された.