ェンド·オブ·ライフケアを含む日常生活介護の場のしつらえに関する研究: 有料老人ホームAにおけるケーススタディー

摘要

本稿では，エンド?ォブ?ライフを含む介護を行う有料老人ホームの一例として，「看取りは生活のなかに自然にあるべき」とする理念で運営されており，特徴的な空間構成を持つ有料老人ホームAでの調査を行った。この結果をもとに，入居者の滞在場所とスタッフの環境評価に着目してこの事例での設えの有効性を検証した。本稿での知見を以下にまとめる。1) 要介護度が低い入居者を中心に，自室と主たる食事の場所以外の「その他の共用空間」への滞在割合が高い入居者がいる。他のユニットへの接続性が高いュニットではこのような居場所の選択性が高いと考えられる。2) 隣接する居室どうしの境界に引き戸を用いた可動間仕切りとし，状況に応じてこの引き戸を開けて多床室的に過ごすことができる構成によって，自室のべッドを離床できない入居者を孤独のなかで過ごさせることがないと評価されていた。3) 居室が緩衝空間を介して居間?食堂に面する位置にあること，その仕切りが開放できることで，要介護度が高い寝たきりの入居者でも継続的に他者との関わりをもつことができている。本稿のように，特徴的な空間構成をもつ事例での入居者の過ごし方や評価を蓄積することで，高齢期の住まいのあり方として有用な資料を提供できると考える。