下水の化学マーカーを用いた東京湾沿岸域における雨天時越流水の影響評価

摘要

雨水と下水が同じ管を流れる合流式下水道を採用している地域では大量の降雨が生じた際，雨水と下水を河川や海へ放流する雨天時越流が生じる。未処理の下水には病原性微生物や有害化学物質が含まれており，雨天時越流が起きた際，それらの物質は未処理のまま放流される。しかし，その影響の程度や範囲，晴天時の水質に戻るまでにかかる時間等不明なことが多い。そこで本研究は、親水性·疎水性両種のマーカーを用いてそれら雨天時越流の時空的な規模を明らかにすることを目的とした。親水性マーカーとして用いた合成甘味料は下水に特異的に含まれ，サッカリン(Sac)は下水処理によってほとhど除去されるが，アセスルファム(Ace)は難分解性で未処理の下水にも含まれる。そのため，Sacを未処理下水のマーカー、Aceを処理水及び未処理下水の両方のマーカーとした。疎水性マーカーとしては，合成洗剤LASの原料であり、未処理下水と処理水で異なる異性体組成を持つ直鎖アルキルべンゼン(LABs)を用いた。