揮発性を考盧したホルムアルデヒドの水道水質基準値の妥当性の評価

摘要

2012年に利根川水系において水道水からホルムアルデヒドが検出された事例を機に，改めてその管理の必要性に焦点が当てられている.ホルムアルデヒドは揮発性物質としても知られており，水道水に含まれるホルムアルデヒドは経口経路だけでなく吸入経路でも暴露する可能性があり，日本はそのリスクを考慮し，不確実係数を10倍加算して水道水質基準値を算定している.一方で，WHOやHealth Canada は水道水からの揮発経由の吸入曝露リスクは小さいとみなし,その評価は一致していない.ホルムアルデヒドのヘンリー定数はクロ 口ホルムの約1/10~4であるが，分子拡散係数は水中?気中ともにクロ 口ホルムの約2倍大きく（表1),気液接触時間が短く非平衡状態の実環境では，ホルムアルデヒドの揮発量は無視しえない可能性がある.しかしながら，ホルムアルデヒドの揮発量を実測しそのリスクを評価した研究は著者の知る限りでは存在しなかった.