中国における導水事業による水環境改善に関する研究の状況

摘要

湖沼、河川の水質改善方策としては汚染物質の発生源対策が基本となるが、他の清浄な水域からの導水も有力である。日本では、武蔵水路を経由した墨田川への浄化用水の導水、手賀沼の北千葉導水等が行われており、環境省も導水による水環境改善の事例集を作成した。中国では、水不足の北部に水が豊富な南部から水を導水する南水北調が著名であるが、2015年までに約16,000kmの導水事業が実施され、水環境改善を意図したものも多数存在する。導水事業の水環境に関する研究は、1996年からの第9次5か年計画で重点対策湖沼に指定された太湖、巣湖、滇池の3湖沼の導水事業が着目されていたが、近年、研究対象水域や着目点、手法が広がってきている。中国の導水事業による水環境改善に関する研究状況について整理した。