TOC 思考法による戦略的な造船経営計画に関する研究

摘要

日本の造船業は建造隻数を決定する制約である建造ドック期間の最大活用を狙ったブロック建造法を開発し戦後9年で世界シェア第1を実現した。その後、1956年から約40年間世界1のシェアを維持した。しかし、1980年代からの韓国造船業の隆盛、2000年代における中国造船業の台頭が起こり現在では世界第3位の建造量になった。Fig. 1は2016年の世界の造船所の売り上げトップ10を示したものである。日本の造船業の停滞が浮き彫りになっている。一方で、一時は造船業が撤退状態と考えられていたヨーロッパの造船所の隆盛に注目しなくてはいけない。ヨーロッパ造船所の成功は市場を大型客船市場に絞り込み、生産効率を高めることで市場を獲得するというオーソドックスな経営戦略と考えられる。特にドイツのマイヤー・ベルフト造船所は大型客船に特化した最高効率化を国家戦略プロジェクトであるインダストリアル4.0の導入を図りハイテク造船所として生まれ変わっている。マイヤー・ベルフト造船所は1999年には倒産の危機にあった造船所であるが、確かな戦略と戦術は大きなIT化設備投資を実現し見事に再生に成功している。本研究では、ヨーロッパの造船所の経営戦略と戦術を分析し、日本の造船業において経営革新・生産革新をいかに進めるべきかをTOCの思考法を活用して提言を行う。