国内長距離路線に対するDynamic Weather Routing

摘要

本研究では，国内長距離路線におけるDynamicWeather Routing の有効性を調べるため，2015 年1 月の風の強い6 日間に新千歳－福岡間を飛行する便を対象として風の影響を考慮した飛行経路の最適化を行い，実際の軌道と比較することで便益の評価を行った．27 ケースに対する評価の結果，対象とした日の風況では向かい風となる便の方がより大きな便益が得られることが分かった．また，最適軌道は一定高度を一定マッハ数で巡航することを仮定しているため，時間の差と燃料の差は同一機種においてほぼ比例する結果が得られた．つまり燃料の削減量は時間の短縮量によって決まることとなる．経路を比較すると，総じて，最適な経路は実際の経路よりも向かい風成分を抑えるように飛行していると言える．時間の短縮量が最大となるケースでは，最適な飛行は向かい風成分が強くならないよう西風が強い領域で経路を南寄りに変更していた．このような飛び方により西風の強い領域ほど対地速度に大きな差が生じた．本解析結果より，対地速度の低下が抑えられるように適切な経路を飛行することが，飛行時間の短縮，ひいては燃料消費量の削減につながることが示された．本解析において最も燃料消費量を削減できたケースは約454[kg]，最も飛行時間を短縮できたケースは約374[s]であった．解析対象からは巡航高度の変更または迂回がある便を除いているため，これらはDWR そのものによる便益である．したがって，本研究は日本国内の長距離路線に対しても，風の強い日は風の影響を考慮した経路の最適化，すなわちDWR により燃料消費量および飛行時間を節約でき運航効率の向上に寄与する可能性があることを示した．さらに解析数を増やし統計的な妥当性の高い結果を得ることができれば，空域の再編成等，TBOの実現に役立つひとつの重要な知見になると期待される．