新分野•新産業を創出する光波センシング

摘要

光を用いたセンシングは、テレビやエアコンの赤外リモコンセンサ、室内照明や防犯灯 の自動点灯·消灯に用いる人感センサ、建築現場等の測量に使用するトータルステーション など、日々の生活で目にしないことがないほど数多くあります。直接目には触れなくとも、 慣性航法のための光学式ジャイロ、薬品や食品の成分分析に使用する分光器、製造現場の レーザ測距装置など、恩恵にあずかつている技術は数知れませh。今や光波センシング技 術は、身の回りの電化製品、建築物、自動車、船舶、航空機等から、社会基盤施設、生産 加工現場、生体•医療計測、環境計測など、あらゆる場面で使用され、我々の生活の支え となっています。さて、一口に光波センシング技術と言っても、原理も種類も多岐にわた りますが、大雑把にとらえれば、対象からの光を検出して、対象自体またはその周囲の状 態を観測する技術、と言えます。検出すべき光は、形状計測や分布•多点型光ファイバセ ンサのように光照射や光伝搬過程で生じる散乱光や反射光の場合もあれば、焦電型赤外線 センサを使った人感センシングのように人体等の対象物が自ら発する光の場合もあります。 また、生体イメージングでは、レーザ光照射による蛍光を利用する手法が数多くあります。 他にも、天文科学分野で補償光学に用いる波面測定がそうであるように、光自体が計測対 象となる場合もあります。いずれの場合でも、所望の光を発生させ、効率よく検出と信号 処理を行うシステムの研究が進められ、新技術が産み出されてきました。新しいセンシン グ技術により新たな知見が得られ、これまでにない計測が実現すれば、必ず新しい学問分 野や産業が生まれます。防災、建築、製造、生産加工、生体·医療、環境、資源、宇宙分野 等への応用を目指した斬新な光波センシング技術は、これまでにも本研究会で多数紹介、 議論されてきたところです。同時に、センサ用の光源、光検出器、導波路、信号処理技術等の要素技術もまた、それぞれに他の学術分野、産業分野に互いに影響をもたらしつつ発 展してきました。