中京大学におけるMPD アークジェット実験環境の構築

摘要

MPD アークジェット（図１）は，電磁加速によってプラズマを加速放出し，その反力で推進する電気推進器の１種である1,2)．特徴として構造が簡素，作動が簡単，様々な推進剤が利用可能，大推力が得られる，推力密度が大きいことなどが挙げられる．MPDアークジェットは，この中の推力密度が大きいという特徴から，既に実用化され大電力化が進められているホールスラスタと並び，将来の軌道間や惑星間のカーゴ輸送システム，または深宇宙探査システムの主推進器としての利用が想定されている．日本では，20W 級MPD アークジェットによるたhせい４号での衛星スピンレート制御， SEPAC では200W 級MPD アークジェットによる電子ビーム中和，SFU では400W 級MPD アークジェットでの電気推進器としてパルス放電型MPD アークジェットの運用実績を有している他，これまでに推進剤による推進性能への影響3,4)や放電室形状による推進性能への影響5)などMPD アークジェットに関する基礎研究についての報告がなされている．パルス放電型は，MPD アークジェットの作動電力が数百kW からMW といった大電力が必要となるのに対して，瞬間的に~MW 級の電力を達成する作動方式である．現在においても定常でMW 級の電力を用いることは困難であることを考えると，まずはパルス放電の放電時間を延ばすことで大電力作動を維持しつつ課題である電極損耗や推進効率の低さを解決していく必要がある．本研究では，こうした大電力MPD アークジェットの定常動作に向けて必要となる要素技術の基礎研究の実施を目的として構築したMPD アークジェット実験環境について報告する．