食塩水中における純アルミニウムA1050と導電性樹脂を用いたCFRPとのガルバニック腐食

摘要

炭素繊維強化プラスチック（Carbon Fiber Reinforced Plastics, CFRP)は，その比強度•比剛性の高さから近年航空宇宙分野で多用されており，今後もその使用割合の増加が期待される材料のーつである.航空宇宙分野ではこれまで主要構造材としてA1合金が多く使用されてきたため，CFRPとA1合金とが共存使用されるケースが増えている.この際問題となるのが「ガルバニック腐食」である.ガルバニック腐食とは電気化学的に貴な材料と卑な材料とが接した場合に，卑な材料の腐食が加速される腐食現象のーつである.CFRPとA1合金とが接した際，CFRP中に含まれる炭素繊維が電気の良導体かつ貴な材料であることから，卑な材料であるA1合金の腐食が加速される.著者らはこれまでに，航空宇宙分野で一般的に用いられているェポキシ樹脂を用いたCFRPとA1合金とのガルバニック腐食に関する研究を実施し，CFRPとA1合金とが接した場合にA1合金の腐食量が増大することを，食塩水中にCFRPとA1合金とを短絡浸漬するガルバニック試験により明らかにした.これまでの試験で用いたCFRPは繊維が炭素繊維，樹脂が非導電性であるエポキシ樹脂を用いたが，近年，電磁波シールド•耐雷性を確保するため，導電性樹脂を用いたCFRPの研究開発が行われている.この導電性樹脂を用いたCFRPとA1とが接した際のガルバニック腐食挙動については，これまで研究が行われていない.そこで，本研究では純アルミニウムA1050 (以下，A1050)と導電性樹脂を用いたCFRPとのガルバニック腐食について，主に電気化学的測定手法を用いて調べた.さらにA1050に陽極酸化処理を施し，CFRPとのガルバニック腐食に及ぼす陽極酸化処理の影響にっいても調查した.