歩行動作の疑似力覚提示のための筋骨格シミュレーション

摘要

VR(Virtual Reality)の分野では近年，力触覚提示に関する研究が盛hである.皮膚感覚や深部感覚に人工の刺激を与え，実際にはそこに存在しない物体に対して接触や硬さ，あるいは実体とは異なる質感などを提示する.視覚や聴覚に次ぐ新たな提示感覚として，臨場感·没入感を高めることや，視覚，聴覚を阻害することなく情報を提示できることなどが注目されている.この中で，疑似力寛と呼ばれる手法により，再現したい感覚を，より小さな出力や異なる感覚で，認識させることが研究されている[1][2].これらの研究では，感覚させたい事象とまったく同等の物理現象を再現するのではなく，それの一部だけを再現する，またはまったく別の刺激を用いて，感覚を提示しようとする.これにより，提示する刺激を，より小さく，簡易な提示装置で実現可能なものにすることなどが可能となり，利用シーンを拡大することもできる.これらの疑似力覚提示の開発は，設計と試作，試験の繰り返しによって目的の感覚に近づけていくことが行われている.しかしこの過程では，試作と試験によるコストと所要時間が大きいという問題がある.一方，製品産業の分野では，設計から製造までの過程において，コンピュータ上での製品の設計とコンピュータシミュレーションによる性能評価を繰り返し，効率化が行われている.これにより，予期していなかった負荷や使用による劣化を事前に可視化することで，実際に試作する前に改善を行うことができ，必要コストを削減できる.疑似力覚提示の設計にも，アイデアを実体化する過程の効率化のため，コンピュータによる設計支援の導入が望まれる.