TMSによる言語野刺激における末梢神経のモデル化

摘要

近年，医療分野において脳組織を非侵襲的かつ局所的に刺激することに関心が高まっている.その方法の一つとしてTMS(経頭蓋磁気刺激法）がある.TMSとは，頭部近傍にコイルを配置し，そのコイルに電流を流した際に発生する磁界の変化により，脳内に電流を誘導し，それによって大脳皮質を刺激する方法であり，治療や臨床で利用されている.一方で，特に言語機能をもつ脳組織を刺激する際，顔の筋肉や喉，顎に痛みを感じるないしは不快であると感じることが報告されている.本稿では，TMSによる神経刺激を再現するために，リアル人体頭部モデルを用いて電磁界シミュレーションを行い，人体頭部内における誘導電界を算出した.さらに，電磁界シミュレーシヨンにより得られた結果を基に末梢神経のモデル化について検討し，神経が応答する入力電流強度の閾値について実験結果と比較を行った.TMSによる言語野の刺激においては皮膚もしくは筋肉のどちらの神経が応答しているかという疑問に対する一つの検討を行った.