低毒性推進剤を用いたアノード輻射冷却式DCアークジェットロケットエンジンの研究開発

摘要

アークジェットロケットエンジンは，カソード(陰極)，アノード(陽極)間にアーク放電を発生させ，その熱により推進剤を加熱し，ノズルにより加速噴射させることにより推力を得る宇宙機用のエンジンである.高い推力を利用して人工衛星の軌道.姿勢制御に用いられる.アークジェットロケットエンジンの推進剤としてヒドラジン(Hydrazine:N_2H_4)が安定性と実績を理由に主に用いられてきた.しかし，高い毒性を持ち，安全管理が困難である.そのため，低毒性推進剤を用いたロケットェンジンの開発が必要である.この低毒性推進剤として注目されてきているのがHAN(Hydroxyl Ammonium Nitrate:NH_3OHNO_3)系推進剤である.HAN系推進剤の特徴はヒドラジンと比べ燃焼性能が高い，取り扱いが容易である等の利点がある.そこで本研究では，HAN系推進剤の安定噴射を目的とする.ヒドラジン，HAN系推進剤の取り扱いの様子を図1に示す.また，水を低毒性推進剤として用いることにも注目している.水は取り扱いが容易であり，国際宇宙ステーション(InternationalSpace Station : ISS)には水再生システム(Water Recovery System : WRS)があり，生活排水を推進剤として活用することができる.さらに，月面にあるレゴリスから水の供給が可能になると考えられる.これにより，地球からの推進剤の供給が不要となるため，水を推進剤として用いることは推進剤運搬にかかるコストや時間を削減することができ，大きな意義を持つ.