直線状金ナノ粒子配列の表面増強ラマン分光特性

摘要

ラマン分光を用いた化学分析は，生命科学，医学，環境測定など多くの分野において，有用な分析ツールとして期待されている。ラマンスぺクトルにおけるラマンシフト量は分子構造に由来するため，分子の構造情報を得ることができ，レーベルフリーな分子同定が可能となる。ラマン散乱は散乱断面積が小さく微弱な光であるが，分子が金属ナノ粒子表面に接触することでラマン散乱光は増強される。この増強ラマン散乱を用いたラマン分光法を，表面増強ラマン分光(Surface-Enhanced Raman Spectroscopy : SERS)と呼ぶ。特に，粒子接点において形成されたナノギャップで非常に大きなラマン増強度が得られる。この強い電磁場増強点を"ホットスポット"と呼び，増強度が高くなるほど，より高感度な分析が可能となる。ナノギャップが小さくなるほどラマン増強度は指数関数的に大きくなる。そのため，ナノ粒子凝集により生成された粒子接点では1nm以下の間隔が形成されるため，非常に大きな増強度が得られる。