マルチギアシステムに対するかみ合い検知を用いた制御系設計

摘要

歯車のバックラッシュは，円滑な歯車の回転を助けるかみ合わせの隙間である。しかしながら，バックラッシュは，その強い非線形要素により，かみ合いの瞬間に衝撃が発生し，騒音や制御系に対する悪影響等の問題を有している。また，かみ合いの衝撃により歯車の衝撃により歯の摩耗が促進され，歯車の寿命が短くなればランニングコストの増大につながる。かみ合わせの衝撃を抑制する手法としては，ノンバックラッシュ化が主流である。代表例としては，シザーズ?ギアやフリクションギア等の特殊な歯車機構の採用が挙げられるが，どちらも回転の際の摩擦力が大きいため，歯車の寿命が犠牲となる課題を有している。そこで著者らは，バックラッシュ有する歯車に対して，制御工学的な観点から歯車の寿命を長く保ちながら衝撃の緩和を行う手法を提案している。先行研究では，歯車のバックラッシュ量であるかみ合い誤差を計測し，歯車同士の相対速度を0に近づけた状態でかみ合わせる制御器の提案を行った。しかしながら，計測雑音により制御系への適用が極めて困難であることが判明し，実験検証に課題を抱えている。そこで本研究では，より実装が容易なかみ合いの衝撃緩和手法として，かみ合い検出を用いた切り替え制御系の提案を行っている。これは，歯車の歯車比の監視によりかみ合い状態と非かみ合い状態を判別するかみ合い検出器を用いる手法である。かみ合い誤差を用いた手法と比べて歯車比は，計測誤差の少なさや真値が理論的に導出できる点において優れている。特に本稿では，統計量のオンライン推定値を用いた汎凡用性の向上手法とかみ合い検出器のフィードバック構造化を行うことにより設計を簡素にした検出器の提案を行う。最後に提案するかみ合い検出器の性能検証を行い，検出器の特性について考察する。