サブナノ秒パルス磁場を用いた 非線形磁化ダイナミクスの時間分解解析

摘要

本研究では、独自に開発したCS法を用いてBertottiらが行ったマクロスピンモデルを用いた幾何学的手法では取り扱うことのできない不安定領域における非線形ダイナミクスを調べた。反転磁場のマイク口波依存性からMASの不安定領域を実験的に決定した。さらに、パルス磁場を重畳印加し、重畳タイミングを掃引することによりエネルギー障壁の時間発展を測定した。その結果、マイクロ波磁場による歳差運動が定常状態に達する前の過渡領域にてー時的に大きなMAS効果が得られることが分かった。さらに、マイクロマグネテイクス計算の結果、マクロスピンモデル計算で予言されていたsd分岐以外に不安定領域にスピン波の波数が不連続に変化する新しい分岐が存在することが分かった。今回の実験条件では、2つの分岐を観察することはできなかつたが、エネルギー障壁の時間変化により計算で出現した2つのスピン波モードのー方が実験で観察されたものとー致することが確かめられた。このように、CS法は、多彩なェ事のスピン波励起が関与する分岐現象を定量的に調べる手法として有用であると考えられる。