文化財のデジタル化における源氏絵の表現と鑑賞コンテンツの開発

摘要

人類にとつて貴重な財産である文化財は経年劣化や環境による消失、人的要因による破壊といったリスクが存在する。博物館や美術館などで文化財の保存や管理が入念に行われてきたが、それに伴って人々が文化財に触れる機会は制限される。しかし近年においては超高精細画像技術やカラーマネジメント技術等の発展と普及により美術品や工芸品、書物といった文化財情報をデジタル化し、そのデータを用いた文化財の保存や修復、学術的な研究への取り組みが盛hとなつた(1)。文部科学省のデジタルァーカイブ推進の報告書(2)によると文化財のデジタル化の試みは文化的資料の保存や文化の継承となるだけでなく，観光や教育，商用化といった2次利用において更なる付加価値が付くとされている。本研究では文化財のデジタル化におけるフォトリアリスティックな見えの表現法を検討しつつ、仮想空間技術(VR)を用いて様々な環境でのインタラクティブな鑑賞を可能とする文化財の鑑賞コンテンツの開発を行った。VRを使った文化財再現の先行研究として、津野らによる屏風の灯明光源効果に関する研究(3)、文化財の展示システム開発の提案として、田中らによる分光情報を考慮した展示システムの研究(4)があげられる。本研究では堺市博物館所蔵の重要文化財である土佐派による源氏絵を用いて文化財の鑑賞コンテンッを制作した。源氏絵には光源を近づけた時の鏡面反射や環境光を反射する金箔を再現し、描かれた当時の灯明による源氏絵の見え方と現代での見え方を比較できるように試みた。また現在の銀箔は酸化し黒色に変色してしまっていることから描かれた当時の銀箔を再現した。