力学的ダウンスケーリング手法を用いた気候変化下における荒川流域での降水特性及び水資源に関する検討

摘要

温室効果ガスの排出量増加に伴う地球温暖化と，その結果としての気候変化による人間活動への影響は，近年より強く懸念されるようになりつつある．「気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel onClimate Change)」が2007 年に発表した第4次報告書では，温暖化によって多くの地域で大雨の頻度が増加する可能性が高いことが指摘されており，我が国においても年降水量の減少傾向や大雨の頻度増加などが報告されている1)．地球温暖化に伴う気候変化の影響研究については，超高解像度の全球気候モデル（GCM）出力を用いた吉野川流域での流域災害環境の変動予測に関する研究2)や，気象庁・気象研究所の温暖化予測実験による21世紀末において日本に影響を与えると考えられる台風をもとに数値シミュレーションを行い，経路の検討及び可能最大被害の詳細な推定3)を行うなどがなされている．水資源の観点からも温暖化の影響評価に関する研究が進められている4)が，大雨に伴う洪水災害についての研究と比較すると，その数は必ずしも多くはない．