非越流連続水制のアスペクト比が水深および三次元流況に及ぼす影響

摘要

水制工は流速を減少させ，水はねにより流れの方向を変え，河岸を守る効果があることが知られている．しかし，水制は水流にとって障害物であることに変わりなく，水制の導入による抵抗増加と水位の上昇を考慮することが重要である．移動床で考えた場合，水制工が流れに対して粗度として働くため，短期的には水位を増加させるが，中・長期的には水制による洗掘で澪筋の河床が低下するため，これが水位を低下させる効果も期待できる．この二つの相反する効果が水制周辺の水位変化を決定づけると考えられるが，どちらの効果が卓越し，結果的に水位がどのように変化するかという点は未解明の課題である．これまでに，水制に関する研究は数多く行われてきている．連続水制に限っても，例えば，水制のアスペクト比（水制間隔/水制横方向の長さ）や水制角度を変化させた場合の河床変動や流れ構造を検討したもの1) 2)や，質量・運動量交換率を検討したもの3) 4) 5)等がある．しかし，水制の粗度としての効果に限って考えた場合については，どのような水理パラメータが流れの抵抗を決定付けるかについて，十分な解明がなされているとはいい難い．たとえば，川幅に対する水制長の比が大きくなると抵抗が大きくなるのは自明であるが，水制長が一定の場合，アスペクト比や，水流に対する水制角度，越流型水制の場合は水没率などが流れの抵抗に及ぼす影響については，未解明な点が多く残されている．