土砂堆積指標を考慮した砂礫州の樹林化評価に関する研究

摘要

河道内樹林化は，植生の過剰繁茂による洪水疎通能力の減少，洪水時に流木化した樹木による河道橫断工作物の破壊など治水的に悪影響を及ぼすだけでなく，単一種による場の占有が引き起こす生物多樣性の減少など，環境面からも問題となっている.これまでの樹林化対策としては，砂礫州の切り下げや一部掘削など，洪水外力の増加によって植生の流失を誘発する，もしくはその後の植生繁茂を抑制する効果を狙つた手法が中心に実施されている.これらの手法は，従来と同程度の洪水でも，植生の生育基盤にきる撹乱規模·頻度を増加させることで繁茂を抑制する点においては効果的ではあるものの，洪水減水期に細粒成分の堆積も生じやすくなるため植生の再繁茂が生じるという問題点も指摘されている.上記のような河道掘削で生じた場も含めた樹林化の初期段階においては，細粒成分の堆積が栄養塩の供給，植生の定着といつた觀点から植生繁茂の有無に影響を与え，その後の樹林化進行に寄与していることが報告されている.