水資源賦存量の地域特性に関する研究その3 簡易蒸発散量推定式の提案

摘要

水資源問題を扱う場合、水資源として理論上人間が最大限利用可能な量である、水資源賦存量を用いて議論されることが多い一方で、国内において詳細な水資源賦存量データは存在していない。そこで筆者らはこれまで、都道府県毎の詳細な水資源賦存量を新たに算定し、その地域特性を明らかにしてきた。また、代表的な蒸発散量の推定方法である、ソーンスウェイト式、ペンマン式、マッキンク式について、その特性の比較検討を行ってきた。しかしながら、蒸発散推定の問題として、ソースウェイト式のように簡便な推定方法では推定精度が必ずしも十分とは言えず、一方でペンマン式のように多数の気象データを必要とする推定方法では推定精度は高いものの、広域の蒸発散量把握のためのデータ収集が常に可能とは限らないという葛藤を持っている。ソーンスウェイト式のように簡便であり、かつペンマン式に近い推定精度を持つ蒸発散量推定方法の検討は、今後の水資源データ構築に非常に有益であると考える。そこで本研究では、簡易に蒸発散量を推定することを目的として、ペンマン式とマッキンク式を元に、蒸発散量推定式の改良を検討することとする。