建築論の京都学派 と「茶室」考（２）: 森田慶一の場合

摘要

建築Architecture や建築家Architect の包括的観念が古代ギリシアに起源を有し、古代ローマのウィトルウィウスの建築書に拠って概念規定され、その後のウィトルウィウス主義Vitruvianism の歴史的変遷を踏まえたヨーロッパ世界における建築論Theory of Architecture の知の形成史は、既に周知のことであろう１）。こうした「西洋的思惟」に基づく建築論の思索が近代日本に受容され、大正・昭和期の京都大学にて独自に創造された一つの学術的伝統、所謂「建築論の京都学派」２）には、武田五一や森田慶一、増田友也に明らかなように、それぞれに受容した西洋的思惟を最大限に活用した研究成果が際立っていたと言える。しかしながら京都学派の哲学３）のように、西洋的思惟の受容や獲得だけに終わらず、それを突破してわが国の「東洋的思惟」による独自な思索展開を成した事例を考慮するならば、「建築論」研究にも同質の試みを見出すことが出来るのではなかろうか。