吉田鉄郎の原点: 初期のスケッチ等に見るその素顔

摘要

これまで建築家 吉田鉄郎の人物像については、「謹厳実直」、「四角四面」、「几帳面」、「神経質」などと評されることが多い。。とくに同じ逓信技師であった山田守の「豪放磊落」、「自由闊達」、「鷹揚」と対照させている。しかしながら、これまでの筆者の調査（矢作英雄遺品）及び過日、国立近現代建築資料館で開催された展示会「吉田鉄郎の近代」の準備作業（矢作資料精査）を通して得られた吉田鉄郎の実像は、それらの定評とは大きく乖離するものであった。とくに、その原点は、実直ではあるが、人と芸術を愛する温和な青春時代であったことが、スケッチやはがき、初期の建築作品、特に役所を離れたサイドワークの作品から窺われる。それらの証左として、彼の膨大な遺品の中から網羅的に、これまであまり発表されることのなかったスケッチ、写真を紹介する。