坂倉準三 地方都市のシンボルとしての市庁舎建築

摘要

以上、4つの巿庁舎のシンボル性を分析した。その結果、山や池など自然地形との関係における風景の創出、ヴオリュームと仕上げによる対比的な構成、立体的なアプローチと空間構成の三点を特徴として析出した。これら風景、ヴォリューム、アプローチという主題は「パリ万国博覧会日本館」「神奈川県立鎌食近代美術館(本館)」以来の主題でもあり、4つの巿庁舎においてもそれぞれの方法で表現されている。上述の担当者三氏のヒアリングからは、この点に関する坂食の指示は確認できなかった。むしろ、三氏とも各担当者に大きな裁量が与えられていたことを証言している。坂倉の真意は言葉がない以上知りえないが、作品を詳細に分析するかぎり、坂倉は都市の核としての市庁舎のデザインにあたり、三つの主題をとおしてシンボル性を付与しようとしたと考えられる。