明治45 年（1912）の鉄筋コンクリート造建築:北九州市戸畑区 旧安川邸南蔵の構造について

摘要

明治39 年（1906）に神戸和田岬に造られた東京倉庫株 式会社の倉庫がわが国最初の鉄筋コンクリート造建築と され，大阪では明治44 年（1911）の大阪高等商業学校図 書館がイギリス人の設計によって鉄筋コンクリート構造 で造られている。（２）現存する日本最古の鉄筋コンクリー ト造建築は明治44 年（1911）の横浜市KN日本大通ビル （旧三井物産横浜支店）や西日本では大正5 年（1916） の長崎市軍艦島のアパートがあるが，明治45 年（1912） の旧安川邸の南蔵も建築に鉄筋コンクリート構造を用い た初期の建築である。 鉄筋コンクリート構造を用いた旧安川邸南蔵の設計と 施工には大阪の鴻池組が関わったと思われるが，使用し た鉄筋は輸入されたた平鋼（フラットバー）を捩じって スパイラル鋼に加工して使用している。旧安川邸南蔵は わが国における初期の鉄筋コンクリート構造の詳細を知 ることができる貴重な建築である。