ハカに建設された都市型城塞に関して:ピレネー国境地帯の16世紀スペイン都市における防御整備

摘要

本稿は、ピレネー国境地帯に位置するスペインの軍事都市の研究の一環として、ハカ(Jaca)で建設された「都市型城塞(ciudadela)」を扱ったものである(図1,図2)。同地帯は、16世紀を通じて、スペインにおいて最も防御整備が行われた地帯で、都市の防御整備やその専門家である工兵(ingenieromilitar)に関する研究にとって重要となっている。当時のスペイン政府の財政に関する研究書に従えば、同地帯で築城に多くの資金が充てられた都市として、サン?セバスティアン(SanSebastián)、フエンテラビア(Fuenterrabia)、パンプロナ(Pamplona)、ペルピニャン(Perpi?án)がある。また1573年の記録には同地帯は上記都市の他、ローサス(Rosas)とサルセス(Salses)を加えた6つの要塞(fortalezas)によって防御されていると記されている(図3)。これらは同地帯を代表する軍事都市であるが、後に、本稿で扱う城塞建設によってハカが加わる。