プロパティマネジメント業務体系に関する研究その６ 資産価値に基づく業務評価手法の研究

摘要

J-REIT の公開情報に基づき、不動産の収益面からみ たPM 業務の実態を分析した。調査対象とした３投資法 人においては、PM 報酬は賃貸可能面積などの建物の規 模に比例した関係にあることや、単位面積あたりのPM 報酬の高い建物では収益性なども向上している傾向が把 握された。PM 業務はオーナーの代行として建物経営を 支えるともに、中長期的なリスクマネジメントや資産保 全業務などを通じて、建物の収益向上などにも寄与して いることがわかった。NPV を活用した資産価値の評価で も明らかなように、PM による賃貸事業収益の維持や資 産保全業務は、資産価値に大きな影響を与える。また、 資産価値評価結果などを活用し、中長期にわたって収益 を維持した場合のPM の貢献度を定量的に評価すること も可能である。今後は、単年度の賃料収入に立脚した従 来の報酬体系だけでなく、ある程度の長期契約を前提に、 賃料収入を維持した場合の成功報酬の導入も検討すべき と考えられる。また、中長期的なNOI の向上や資産保全 業務を通じた資産価値の維持などを数量化し、業務報酬 やPM 会社の評価に付加することも得策であると考えら れる。これらの手法の導入によりPM 業務の収益性を向 上させるとともに、PM によるオーナー支援業務や資産 保全業務などについても一層充実していくものと考えら れる。不動産投資市場における世界的な金融危機を契機 として、短期的な売買利益を主眼とする不動産投資手法 から中長期的な保有を前提とする投資手法に大きく移行 する可能性がある。中長期保有を前提とした場合は、投 資用不動産の資産価値の保全や管理品質の維持?向上を 担うPM 業務への期待は、益々大きくなると考えられる。