東京都の地域危険度マップに見る震災時火災に対する広域避難の課題:品川区を対象として

摘要

首都東京を含む関東での直下地震による被害想定は，例えば内閣府の中央防災会議の発表によれば，東京湾北部を震源域とする「東京湾北部地震（M7.3）」では，冬季の18時，風速15m/sという暖房器具やコンロなどの熱源，火気の使用頻度が高く，強い風が吹く条件下において，建物全壊棟数?火災焼失棟数は約85万棟（うち，火災焼失は65万棟），死者数は約11,000人（うち，火災を原因とするものは6,200人）にも及ぶとされている。万が一，こうした甚大な被害が発生した後の生活や復旧に大きな不安がある一方，被害を最小限に抑えるための防災対策の整備も実施されている。代表的な対策は，防災拠点，避難場所，避難道路，延焼遮断帯の整備と共に，広域避難を強いることになる市街地火災の根源である木造住宅密集地域の不燃化の推進である。2013年1月には不燃化推進特定整備地区制度（案）をまとめ，一層の不燃化を推進する施策を強化する動きも見られる。これにより不燃領域率が70％以上，面積が65ha以上，木造住宅が50棟以上連担しない複数の町丁目で構成されるエリアは，地区内残留地区となり，大規模な延焼火災の恐れが少なく，避難場所への広域的な避難を要しない区域（平成20年2月現在で33カ所，90km~2）として指定される。