三次元立体露光法を用いて作製したがん細胞浸潤過程観察用マイクロ流体デノくイス

摘要

がん転移は、がんによる死亡に深く関与している。血行性 のがん転移の過程では、がん細胞は原発巣を離脱し、間質組 織へ浸潤、血管内へと侵入すると考えられている。近年、がrnん細胞は単一細胞よりも、2〜50個の凝集体として浸潤する 方が転移巣の形成能が高いことが報告された(1)。これはがん 細胞間接着や細胞同士の相互作用が、その生存率に関与す るためだと考えられる(2)。我々は、微細加工技術を用いて、 細胞間の接着やそれに伴う細胞間相互作用をよりよく反映 しながら、がん細胞の浸潤を観察できるマイク口流体デバ イスを開発した。デバイスの基本構造は、2本の平行な主流 路を、より小さい寸法のマイクロ流路がつないだ構造であ る（図1参照)。主流路の片方には細胞懸濁液を、もう一方 の主流路には浸潤を促す因子を含む培地を流す。この浸潤 促進因子により、細胞がマイク口流路を通り、もう一方の主 流路に移動する（化学走化性）様子が観察できる。本研究で はさらに、マイクロ流路の中央にオリフィス構造を設けた。 マイクロ流路開口部の径は複数の細胞がはまる大きさだ 力、そこから滑らかな曲面で狭まり、最小径となるオリフィ ス部の径は単一の細胞よりも小さい（図2参照）。複数の細 胞が互いに接触しながら詰まることのできる3次元的構造 のマイクロ流路を設けることで、より積極的に細胞間相互 作用を促進するマイクロ流体デバイスを開発した。