計算力学とAIの融合へ向けて：CPSを前提とした計算情報科学基盤

摘要

IoTの進展と共に膨大な数の機器・システムがネットワークによってクラウド・プラットフォームに接続され、機器の運転データなどが時々刻々集約され、クラウド上の機器・システムモデル（Digital Twin）の仮想運転データと比較して機器・システムの性能や寿命の予測を行い、さらに多数の機器群の運転データ等を統合的に学習し、予測機能や運転制御の効率向上を実現してゆく時代となる。そのために、CPS (Cyber Physical System)を前提としたものづくりとCAEの再定義をすでに提案した1）。本稿ではCPSにつながる機器をコネクテッド・プロダクツと定義し、さらにCPSによって接続された機器・システムによって実現するスマート・サービスの開発を含めた環境を、対象となる人や社会のモデルを取り込んで、拡張CAEとして再定義する。さらに機器・エッジ側の知能化とクラウド・プラットフォーム側の知能化の役割分担を明確にする。その結果、従来の製品単体での機能設計・構造設計に加えて知能化設計とネット化設計が必要となり、その開発プロセスでそれぞれ検証システムが新たに必要となる。これは、近年自動車等の設計において広く適用されつつあるMBD（Model Based Development）に知能化設計やネット化設計のコンポーネントを組み合わせることで実現可能であり、さらにMBD開発が終了した時点で、クラウド側のDigital Twinの性能モデルとして適用できることになる2）。