生國魂神社の大正期における境内整備と社殿再建について

摘要

大正期の再建について、境内の整備と社殿の復興の観点から考察すると以下の通りである。境内整備は江戸期は「南坊」であった北半の敷地をとりこみ、ここに絵馬殿など祭祀に関係の薄い建物を移動し、本殿の周囲に祭祀に必要な建物を集約し求心性の高い空間を創出した。本殿の再建は復原を意図しつつも、厳密な復原とはかけ離れた自由な設計姿勢であるが、近代における社殿形式の継承の一事例となると考えられる。設計者は文部省の技術者が関わり、現場監督は大阪府技師が関与していることが確認された。今後は江戸期の「生魂造」の解明や、昭和期に行われた境内整備についての整理が課題である。