船場の聖地と徳川期の名所化－水の聖地の意味論その６

摘要

古代の聖地を拠り所として、水の聖地を大坂城下の都市開発とともに築いた秀吉期に続けて、それらは徳川期にあっても都市の要所として信仰され続けた。そこには、人々の水への祈りという、古来からの水に対する精神性が根底にある。豊臣期の上町台地の開発では、都市の繁栄や水への豊穣を願い、湧水池に水の神が勧請された。豊臣後期の船場開発では、治水の神が船場の湿地帯開発とともに勧請される。人々は恵みを祈るだけでなく、水への畏怖の念を抱く。自然と人間の共生というあり方は古代より変わらず、この時代にも受け継がれ都市が形成されていたと言える。徳川期になると、水の聖地はさらに賑わいを増し、祝祭がその全盛を迎え、大坂の名所となった。大坂は水の聖地という観点から見れば、そのほとんどが豊臣秀吉によって再編成された都市であると言えるが、徳川期になると、町人や商人が深く関わりはじめた。豊臣期の都市計画に加え、徳川期の再聖地化、そして時代の流れとともに町人・商人による運営という、これらの要素をあわせ持つのが水の聖地から見た大坂の都市であり、時代の中で水の聖地の民衆化が進むことで、現在まで多くの聖地が継承されているのである。