日本古民家にみられる陰影の構成要素について -明暗とめりはりによる検討-

摘要

近年、照明の技術の向上に伴い輝度が高く均一な照明 が推奨されてきた一方で、日本の伝統美である薄喑さや 陰影が失われてしまっている。谷崎Dは『陰影礼讃』にお いて、電灯がない時代の日本の陰影の美を論じた。また、 乾2)は陰や闇が幾重にも組み合わされることで日本の陰影 は成立していると唱えている。本研究では、伝統的な日本の古民家において、陰影を 作り出し深める、ほのあかりゃ薄喑さの現れ方を調査し 整理することを目的とする。照明のない建築空間は現代 には不適切であるが、明るさと喑さの共存した不均一照 明の空間は日本古来の陰影の美に近づけると考えられて いるため、調査結果が現代に生かせると考えた。