鉄筋コンクリート造の地方における技術的伝播と地方生産組織に関する研究:鉄筋コンクリート造の公営住宅標準設計に着目して

摘要

地方における公営住宅団地は供給主体である自治体の経済状況等を映し出し、規模は様々なものの、その地域における住宅建設事情や地域特性が色濃く反映されていた。標準設計が志向した均一な近代技術の拡散は、戦災復興初期の膨大な住宅不足をテコに、特に地方中枢都市以外の地域では大いに機能したと考えられる。また、各地において異なる風土や生活習慣、経済状況等があり、設計を行う自治体もそれらを考慮するようになり、自治体によっては独自の標準設計が作成されるまでに至った。このことは公営住宅の建設の際、建設省で作成された公営住宅標準設計は技術書として用いられるばかりではなく、一種のカタログ的にも用いられ、そこには様々な要素を取り入れる余地があり、このことも技術の一般化を大きく促したと思われる。従って、一元的に広まると思われていた近代技術は、斑状に発展しながら、最終的にはどの地域でも同水準の鉄筋コンクリート造建築を建設できるように至ったと考えられる。