国有林野法による京都府社寺上地林の境内編入と古社寺保存

摘要

周知のように、明治初期のいわゆる「社寺領上知令」により、全国の社寺が領有していた広域の林野（朱印地・除地）は国有化された1)。その後、国有林野法（明治32 年3 月22 日公布）により、「境内ニ必要ナル風致林野」であれば上地林を境内に編入することが可能となった。本稿は、京都府立総合資料館蔵資料をもとに、境内編入の実施された京都府下の社寺の全体像を明らかにしつつ、国有林野法と同時代に成立した古社寺保存法（明治30 年6 月10日公布）が、「特別保護建造物」の「防災」という観点から「境内編入」と関連していたことを指摘するものである。