コーラ修道院のパレクレシオンにおけるキリスト教絵画による空間構成

摘要

本稿はイスタンブール、コーラ修道院のパレクレシオンにおけるキリスト教絵画の主題及び配置による空間構成の分析を行い、14 世紀の献堂者テオドロス・メトキティスの墓室の配置の意味を明らかにすることを目的とする。現存するコーラ修道院は12 世紀の献堂者イサキオス・コムネノスによるナオスと、メトキティスによる内ナルテクス、外ナルテクス、パレクレシオンを合わせたものである（図１）。パレクレシオンは葬礼用の付属礼拝堂である。西出入口または南出入口から外ナルテクスに入り、西側からパレクレシオンにアプローチする。パレクレシオンには旧約聖書の物語や「最後の審判」「冥府降下」、復活に関連する図像、多くの聖人像が描かれ、聖母マリアの象徴とキリストによる救済が表現されている。アルコーブ状の墓室が北壁2 箇所、南壁2 箇所の計4 箇所あり、北壁西側の墓室がメトキティスの墓室と考えられている。東突当りにアプシスがあり、また、北壁のメトキティスの墓室西隣にはナオスへ通じる細い通路がある。14 世紀の増築の前にも、現在パレクレシオンがある場所には付属礼拝堂があり、付属礼拝堂からナオスへ入る出入口があったことが、発掘調査より示唆されている。