無意識下に与えられた不快感の解放による快感覚提示に基づくストレス軽減手法の開発

摘要

現在，職場でのストレスが問題となっている．自殺者の28.2%は非雇用人であり，自殺原因のうち42.1%はうつ病等の精神疾患である．また，うつ病の原因はストレスの慢性化にあると言われている．そのため職場環境のストレス対策が急務であり，対策にはストレスを「検出」しそれを「軽減」することが必要である．前者については，PSS14のような主観アンケートや，心電や呼吸波形等の生理指標，キーボードやマウスの動きなどの行動指標を用いたストレス推定の研究が行われてきた．後者については，労働者が自発的に行うタバコ休憩やコーヒーブレイクがある．また，瞑想にストレス軽減効果があることがわかっている．しかしこれらは自発的にストレス軽減行動をとれる人向けのものである．現実には，上記のような自発的なストレス軽減行動が怠慢だと認識されたり，ストレス軽減の優先度が仕事よりも低く設定していることなどが原因で，自発的なストレス軽減は困難である．そこで職場環境に適合した，自動的にストレスを軽減する手法を開発する必要がある．ストレス軽減の手法として，音楽や自然映像のような快刺激を提示することが考えられる．しかし，不快感の提示は単純なまぶしさや騒音で可能であるといった事例からも伺えるように，不快刺激の提示は快刺激に比べて提示が容易である．よって本研究では，不快刺激のみを利用した手法として，不快刺激を気づかれないように負荷し，その後不快刺激を停止することで不快感の解放による快感情を励起させるストレス軽減手法を提案する．本稿では不快刺激として足先の冷却を選択した．まず気づかれないような足先の冷却温度を調査し，その後，冷却刺激の解放により実験的に負荷したストレスが軽減されるか検証した．