アルヴァ・アアルトによる「パイミオのサナトリウム」に関する研究-療養空間のデザインについて

摘要

「パイミオのサナトリウム(Paimio Sanatorium,Turku,1928/1929-1933)」はアルヴァ・アアルト(Alvar Aalto,1898-1976) が「新しい近代建築の旗手」1 として世界にその名前を知られることになったきっかけとなる作品であり、この作品で「建物のありとあらゆるもの」2 を自分でデザインしたことが彼の建築家としての経歴において非常に重要であったと言われている。作品のディテールについて言及されることは多いが、その内容は「この人間的な配慮は建物のディテールまで細かく行き届いている」3 といった記述に留まっており、全体から部分に至るまでー貫したデザインとしてとらえた論文は見当たらない。本論文では、サナトリウムの内で患者が日常生活を行う病室、レストテラス、ダイニングホール、階段室の空間を「療養空間」とし、それら室空間とそこに配された家具等4の構成を分析し、アアルトによる面材、線材のディテールの特徴を明らかにする。（図1.）