Do Hybrid Organizations Operate Effectively? The Combination of Long-term Employment and Performance-related Pay in Japanese Firms

摘要

本稿は，長期雇用を維持して成果主義を導入する日本企業の新たな方向を，従業員の仕事意欲に焦点を合わせて検討する。長期雇用と成果主義という異質な原理の組合せをハイブリッドと呼ぶとしても，それが有効に機能するのかは必ずしも明確ではない。現実には長期雇用の方針と両立させるために，成果主義が意図する業績連動賃金の変動と格差は抑制されることが考えられる。この結果，従業員のインセンティブは弱められ，成果主義の当初の意図は挫かれるかもしれない。するとこれを打破するために，長期雇用を否定して成果主義を強化するという方向が意図的に選択されることが考えらえる。これとは反対に，成果主義が定着するためには，変動と格差は抑制される必要があると考えることもできる。それは長期雇用と両立するための意図的選択であると言える。このような観点から，本稿は，日本労働政策・研修機構（JILPT）が２００５年と２００９年に行った従業員アンケート調査に基づいて，ハイブリッド組織における成果主義の作用を検証する。特に本稿では，仕事意欲を個人業績の達成意欲，会社業績に対する貢献意欲，そして新しい課題の挑戦意欲に区別したうえで，成果主義の作用がそれぞれに異なることを明らかにする。そのうえで成果主義の強化の方向と抑制の方向に日本企業が分化する可能性について言及する。